
火 吉川創揮
うわの空うつくしくあり十二月
蒲団敷く藏の二階のがらんどう
一つ戀延々とあり針供養
湯に潛る頭に柚子のあたりけり
藥甁ずらりと夜や年送る
火桶抱く部屋に昔の雑然と
かくれんぼの鬼の納戸にゐるからは
爪光る火事のはじまりはじまりに
凩と足音よぎる眠りかな
火の縦に山の眠りを走りけり
短詩系ブログ
火 吉川創揮
うわの空うつくしくあり十二月
蒲団敷く藏の二階のがらんどう
一つ戀延々とあり針供養
湯に潛る頭に柚子のあたりけり
藥甁ずらりと夜や年送る
火桶抱く部屋に昔の雑然と
かくれんぼの鬼の納戸にゐるからは
爪光る火事のはじまりはじまりに
凩と足音よぎる眠りかな
火の縦に山の眠りを走りけり
ままごと 吉川創揮
白壁を蔦の跡這ふ秋の声
銀の秋舌に飴玉たしかむる
光より小鳥の帰りきて窓辺
行く秋の影いちまいは針仕事
ままごとの家族は落葉暮しかな
落ちてゐる光はねぢや山眠る
山茶花の学校に来るこはい夜
外灯のぼんやり道の鯛焼屋
おやすみは蒲団の中のまつくらに
絵の外は冬晴の陰翳の部屋
夏痩 吉川創揮
夏山やかつ丼のかつつゆ浸し
窓がらす疎にして空家かたつむり
芍薬や雨みつちりと遠き景
手花火を配る係となりにけり
空間にプールの匂ふどこかの子
釣堀や夢から上がらない私
切株の羅列の午後に伸びてゐる
思い出に巻かれて夏を痩せにけり
コンビニの青秋だとか言うみんな
カーテンの向かうのこゑは秋のもの