
反復 吉川創揮
不意に朝其に躓ける蟇
夏休世界ルーペに間延びして
蝸牛法要にのみ遣ふ部屋
青大将踊りながらに食べ進む
炎昼は白柱終のなき鬼ごつこ
蜘蛛の囲に蝶の穏やかなる回転
八月はビルと空地を繰り返す
汗の腿挟みに回転木馬かな
夕焼や紙の袋の匂い抱く
水羊羹月見て月となるさなか
短詩系ブログ
反復 吉川創揮
不意に朝其に躓ける蟇
夏休世界ルーペに間延びして
蝸牛法要にのみ遣ふ部屋
青大将踊りながらに食べ進む
炎昼は白柱終のなき鬼ごつこ
蜘蛛の囲に蝶の穏やかなる回転
八月はビルと空地を繰り返す
汗の腿挟みに回転木馬かな
夕焼や紙の袋の匂い抱く
水羊羹月見て月となるさなか
春の夢 吉川創揮
ささくれの喉まで花の夜の降りる
乾杯の高さに春の月ありき
鶯や手首に青を催して
恋歌よ時間は桜呑み干せる
長き日の嘔吐に遣ふ筋あまた
草餅や公園に散る白きこゑ
空耳の木々を光ながらに風
瞬きとしやぼん玉とが搗ち合へば
行く春の扉に小さき扉あり
白魚や目で天井に夢記す
ふたつ 吉川創揮
咳く度に閃く池があるどこか
猫の目の現れて夜の底氷る
映画『花束みたいな恋をした』 六句
観覧車を廻る明滅息白し
汝と歩く二月世界を褒めそやし
黙に差す春の波永遠の振り
つくづくしあんぱん割るに胡麻こぼれ
夢ふたつ違う夢にて春の床
地図の町名に汝の名つばくらめ
日・日陰蝶の表裏のこんがらがる
空のまばたきに万国旗を渡す
火 吉川創揮
うわの空うつくしくあり十二月
蒲団敷く藏の二階のがらんどう
一つ戀延々とあり針供養
湯に潛る頭に柚子のあたりけり
藥甁ずらりと夜や年送る
火桶抱く部屋に昔の雑然と
かくれんぼの鬼の納戸にゐるからは
爪光る火事のはじまりはじまりに
凩と足音よぎる眠りかな
火の縦に山の眠りを走りけり
ままごと 吉川創揮
白壁を蔦の跡這ふ秋の声
銀の秋舌に飴玉たしかむる
光より小鳥の帰りきて窓辺
行く秋の影いちまいは針仕事
ままごとの家族は落葉暮しかな
落ちてゐる光はねぢや山眠る
山茶花の学校に来るこはい夜
外灯のぼんやり道の鯛焼屋
おやすみは蒲団の中のまつくらに
絵の外は冬晴の陰翳の部屋
夏痩 吉川創揮
夏山やかつ丼のかつつゆ浸し
窓がらす疎にして空家かたつむり
芍薬や雨みつちりと遠き景
手花火を配る係となりにけり
空間にプールの匂ふどこかの子
釣堀や夢から上がらない私
切株の羅列の午後に伸びてゐる
思い出に巻かれて夏を痩せにけり
コンビニの青秋だとか言うみんな
カーテンの向かうのこゑは秋のもの