火  吉川創揮

 火    吉川創揮

うわの空うつくしくあり十二月

蒲団敷く藏の二階のがらんどう

一つ戀延々とあり針供養

湯に潛る頭に柚子のあたりけり

藥甁ずらりと夜や年送る

火桶抱く部屋に昔の雑然と

かくれんぼの鬼の納戸にゐるからは

爪光る火事のはじまりはじまりに

凩と足音よぎる眠りかな

火の縦に山の眠りを走りけり

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