Unclarity 丸田洋渡
あいまいな月の百年が経つ。
バスはもうすぐ いま季とされているものは
二つ三つ古いんだ地図は地図でも
こと切れて傀儡の蝶は葉のように
壊れた橋を壊したということにする
変梃な球体がまだ部屋にある。
月で歪んだ波で歪んだ月で歪んだ
もちろん花は もちろん花は もちろん花は。
鏡を介せば話せる。
○
宇宙からようやく見えるバスルーム
迂闊にも蜂の域から抜けられず
予兆なら疾うに来ている花祭
鈴生りのブルーベリーの卒業アルバム
口伝とはいつも胡乱に百日紅
せめて絵ならきれいな空を絵空事
○
帰ります 引き止められるつもりもない。
意味のない日没を見ている。
日時計のそれからを知らない。
光の中に太陽がある。
流速と風速のさなかにいる。
人は飽きた。
麒麟は麒麟と結婚することになるのか?
夢の水牛の足跡に沿って歩いた。
白犀が金木犀と出会うとき。
ずっと窓だと思っていた。
お湯が沸く。お喋りに時間を費やす。
この場合解決が目的ではない。
○
喩に浸かる。肩まで浸かりそのまま寝る。
蜂になら花せば分かるはずだった
葉がいたむ。いそいで鹿に駆けつける。
目覚めても空の心地の蛭下がり
○
顔を失くす。遺失物センターへ行く。
酩酊の建築物の五十階
六階と抑止力とが入れ替わる
街灯の下のドアから人が出てくる
いつも熾烈な天使の視察
宇宙にやり直しは効かない。
○
音楽が美味しい黒の喫茶店
名作は運をからめてからまれて
論戦に溶ける青空溶ける舌
温泉が血としてある温泉街へ
村いっぱいの薔薇のトランプ
寝て見ている悲喜こもごもの熱暴走
四阿を酔いの機械が醒めるまで
○
風景に私はいない。私はいない風景のことを。
厭に明るい眠たいダムを抱えている。
涙が紅葉し始める。
雪のからくりなら解けた。
呼ぶ声と呼ばれる声が同じになる。
終わっていない手品がある。