所収:『森を離れて』 角川文化振興財団 2015
旅行などと言っていられるご時世ではないが、旅行の句を。
私の大学の同級生が広島の離島に実習に行った際に、実習先の方がその場で蜜柑をくれただけでなく、後日箱いっぱいの蜜柑を郵送してくれたということがあったらしい。「つぎつぎに」蜜柑を貰うなんて素敵な旅も現実にさもありなんという感じである。
「旅の空」という語で句を締めるのがとてもよい。蜜柑は旅人の手元にあるのだが、空という広い景色の語の印象で蜜柑畑まで見えてくるような気がするし、何より気持ちがよい。上5中7はあくまで旅の1エピソードだが、下5が旅の景色やイメージをぐっと広げてくれることで、ただのエピソード披露の出オチに終わらない魅力を醸している。
記:吉川