梅雨寒し忍者は二時に眠くなる 野口る理

所収:『しやりり』ふらんす堂 2013

 ちょうど、昨日今日が「梅雨寒し」だろう。
 「忍者」なんて俳句では中々見かけない語だけれど、「忍者は二時に」(ninja wa niji ni)の音の反復が生み出すリズムのよさで、浮くことなく1句の中に馴染んでいる気がしてくる。「梅雨寒し」(tsuyu samusi)「眠くなる」(nemuku naru)の「u」音の連なりもリズムを生んでいるかもしれない。声に出して読むと非常に楽しい。
 書かれてあることは非常に滑稽だ。忍者には深夜2時でも見張り(?)のような仕事があるのだろう。それでも季節外れの寒さに、それとも一定のリズムを刻む雨の音に眠くなってしまう……。
 内容が滑稽なのは勿論、断定の思い切りの良さという表現の面でもおかしみが滲んでいる。だんだん「忍者は二時に眠くなる」というタイトルのB級時代劇コメディーがあるような気がしてきた。

記:吉川

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