
金沢 平野皓大
北国や雪後の町をいくつ抜け
南天の葉の浮きさうな寒の雨
雪だるま百万石のどろまじへ
梅咲かす川淋しくて明るくて
ほつそりと加賀の軒端の雪雫
この国の鱈を昆布で〆るとは
木の芽風入浴剤を撒いてみん
餅食つてちらつく粉は粉雪は
雪吊にいつしかの鳶腹を見せ
駅のまへ雪吊の丈そろふなり
短詩系ブログ
ふたつ 吉川創揮
咳く度に閃く池があるどこか
猫の目の現れて夜の底氷る
映画『花束みたいな恋をした』 六句
観覧車を廻る明滅息白し
汝と歩く二月世界を褒めそやし
黙に差す春の波永遠の振り
つくづくしあんぱん割るに胡麻こぼれ
夢ふたつ違う夢にて春の床
地図の町名に汝の名つばくらめ
日・日陰蝶の表裏のこんがらがる
空のまばたきに万国旗を渡す
火 吉川創揮
うわの空うつくしくあり十二月
蒲団敷く藏の二階のがらんどう
一つ戀延々とあり針供養
湯に潛る頭に柚子のあたりけり
藥甁ずらりと夜や年送る
火桶抱く部屋に昔の雑然と
かくれんぼの鬼の納戸にゐるからは
爪光る火事のはじまりはじまりに
凩と足音よぎる眠りかな
火の縦に山の眠りを走りけり