
手品 吉川創揮
鳥影の通過の夏の川模様
蟻行くを指歩かせて附きにけり
抱く膝に金魚一匹づつ泳ぐ
手中にも神様のゐる夜店かな
よもつひらさかバナナの皮の熟れてある
陰翳を束ねダリアや君に合ふ
海いちまいハンカチ散るは咲くやうに
夏蝶は対称で耳打ちし合ふ
記憶殖やす日記に羽虫潰れある
秋近し鳩の顔つき一列に

短詩系ブログ

手品 吉川創揮
鳥影の通過の夏の川模様
蟻行くを指歩かせて附きにけり
抱く膝に金魚一匹づつ泳ぐ
手中にも神様のゐる夜店かな
よもつひらさかバナナの皮の熟れてある
陰翳を束ねダリアや君に合ふ
海いちまいハンカチ散るは咲くやうに
夏蝶は対称で耳打ちし合ふ
記憶殖やす日記に羽虫潰れある
秋近し鳩の顔つき一列に

Nietzsche 柳元佑太
いまだ梅雨來ず古書店主ジャズかけ寢
また僞の記憶の水母浮沈【うきしずみ】
番犬の須臾の優しさ濃紫陽花
ひと待ちの極み涼しき cafe GOTO
Nietzsche is dead. 蝉の寫眞をインスタに
短夜や汝が陰毛に棲む夷狄
六月はたとへば鮫の欷歔【すすりなき】
旱星視て五輪可と卜【うらと】へや
立泳咳病【しはぶきやみ】を恐れつつ
われら神を擬すか汗かき人を殺め

反復 吉川創揮
不意に朝其に躓ける蟇
夏休世界ルーペに間延びして
蝸牛法要にのみ遣ふ部屋
青大将踊りながらに食べ進む
炎昼は白柱終のなき鬼ごつこ
蜘蛛の囲に蝶の穏やかなる回転
八月はビルと空地を繰り返す
汗の腿挟みに回転木馬かな
夕焼や紙の袋の匂い抱く
水羊羹月見て月となるさなか

在廊 柳元佑太
若鮎や宙で給油の戦闘機
腰かけてピアノ冷たし鯛の海
囀や金緣眼鏡放光す
キャラメルの銀紙に春惜しみけり
鯉幟渚の砂の冷たさに
在廊の画家のはにかむ金魚かな
はつなつのとほきくぢらをおもふなれ
音もなく鬱にぢり寄る簾かな
ぢつとしてゐる沢蟹と鬱を分つ
国破れても五輪とや冷蔵庫

夢中 平野皓大
馬むかし宛なく走る椿かな
若駒や夢中を生れ来る如く
戻るには遠くありけり花筏
後朝の眉間のいろの土匂ふ
木蓮にしばらくぶりの雨女
春の雨猿股猿の如く濡れ
金閣のパズルを飾る春夕べ
わしづかむ本四五冊や春の夢
囀りや老婆の口のさぞ乾く
蛇穴を出でてしきりに腹を巻く

春の夢 吉川創揮
ささくれの喉まで花の夜の降りる
乾杯の高さに春の月ありき
鶯や手首に青を催して
恋歌よ時間は桜呑み干せる
長き日の嘔吐に遣ふ筋あまた
草餅や公園に散る白きこゑ
空耳の木々を光ながらに風
瞬きとしやぼん玉とが搗ち合へば
行く春の扉に小さき扉あり
白魚や目で天井に夢記す