投稿日: 2020年7月3日2020年6月30日the fifth season’s texture 丸田洋渡 the fifth season’s texture 丸田洋渡 律の移動わたしと接している闇 雨のなか花のきもちで石のきもちで 雨のあとの三角形が分からなかった 川に海に婚姻ふるびている日照 季 いくら剥がしてもまだある布の 空の書法織って織られて水に似て 心臓に魚のこころ見えている 死は一生分の閃きとともに 雲として現れたいよ格子窓 レモネード空はいつでも回転式
投稿日: 2020年6月26日2020年6月26日海 柳元佑太 海 柳元佑太 雨乞を総出でしたり西瓜村 喩の魚の水得て炎天に浮くか 雨乞の雨が誤配や山向う 夏のゆめ海は何気に茨城に 夢くはせ獏可愛がる昼寝かな うつつ食ふ獏は殺めて西瓜糖 幻か真夏真水に彳むは 見えねども虹ある日々は手漕舟 西瓜童子寝坊を軽く詫びにけり 夏雨滂沱茶漬は何の出汁なりや
投稿日: 2020年6月19日2020年6月19日旗 平野皓大 旗 平野皓大 虚子選や冷酒日和に友がなく 箱庭のかなりを芝にして戻す 寂たり寥たり祭をのぞきけり 遠雷の気まぐれ雲を八雲とも 水中花地獄くんだりし給ふか 幽霊の真水のやうな下宿かな 汗吹かる起床の腸が熱うある 背が割れてゐるから殻や南風 くちなはの勾配に枝の太々と 沖膾旗を干してはひらめきぬ
投稿日: 2020年6月12日2020年6月12日遠く見る 吉川創揮 遠く見る 吉川創揮 云ふ間にも夕立の粒見えてきし 十薬は遠のくやうな明け方に 押入の二階に兄や梅雨に入る 更衣マンション群といふ反射 アイスコーヒー氷を離れてゆく水 手の中に消えゆく氷のざらつき 向日葵や手すりに顎をのせてゐる よこながに夏晴れてゐる鉄路かな 目を瞑るこはさを泳ぎ続きけり 蛾の軌跡縺れながらにうすあかり
投稿日: 2020年6月5日2020年6月4日亜麻色の燦 丸田洋渡 亜麻色の燦 丸田洋渡 空に棹さして四千の演奏 うっとりと虹の骨子を呑みこむとき 萍をすべらせ川の正しい地図 流しそうめん場の小さな滝と洞窟 しずかな日のしずかな殺人水芭蕉 雨、雨、縫合の亜麻色のさなかに 羽のあるゆたかな舞踏草いちご 花潜ひかりの網にかかりつつ 浮上 いちめんにすずしくて合図は 繭こわれ渦のかたちにやまない燦 *萍(うきくさ)、燦(さん)
投稿日: 2020年5月29日2020年5月29日似非 柳元佑太 似非 柳元佑太 楠へ鳥突つ込むを更衣 筍を提げ人様の夢に出ん 赤鱏や海にもありて飄 一族の〆鯖好きも柿の花 雷や何はともあれ穴子寿司 夏風邪の鼻垂れて秘儀猫だまし 大學で似非學問や稲の花 カンフーは気の変幻や龍の玉 秋風や波乗り替へてあめんぼう 本積んで懈怠の民か秋昼寝 *飄(つむじかぜ)
投稿日: 2020年5月22日2020年5月22日いろは 平野皓大 いろは 平野皓大 雨乞や暑を焚きしめて蛇は息 餅を焼くための団扇や天気雨 気にいつて臍ある神を水団扇 姫糊をうすくつめたく夏の月 製本の紐のいろはも青すだれ 白百合を乾かす風に帆は西に 山嶺に日矢のかからん鯖の肌 舟虫や鉄のあからむ日本晴れ 呉の越のぐらぐらしをる舟遊 つややかに細みの針を鯵の口
投稿日: 2020年5月15日2020年5月15日天井 吉川創揮 天井 吉川創揮 つちふるや目覚めて指のあるふしぎ 行く春のスプーンの銀を舌のうへ 葉桜や自転車の眩しき転倒 五月来ぬ顔に人影落ち掛かり 更衣こゑにのどぼとけの上下 翡翠を見し目いくつものまばたき ほうれん草天井に雨騒がしき 枝に張る夜の分厚さや金魚玉 歩くこと思ふことへと夏休 夜が来る部屋に冷蔵庫と僕と
投稿日: 2020年5月8日2020年5月5日再演 丸田洋渡 再演 丸田洋渡 葉書くる花過ぎとこしえのダンス 芍薬とその周辺が思いだされる むかしほど細かく見えて作り雨 白玉や空を初めて見たときのこと そのころの草矢眩しく電気を感じる くらやみにおける白蛾に似て脳は わたしより前の記憶の水中花 鷺になり光を追う点滅のさなかに 羽と天秤くらがりを鮎なめらかに ただ一人祭のなかで思いだした
投稿日: 2020年5月1日2020年5月1日団子と茶 柳元佑太 団子と茶 柳元佑太 妹ゆ捨仔猫飼ふ謀 紅梅や男は尿を見つつ出す 積もらない雪が降りをり桜鯛 啓蟄や火星にも地震あんなりと 祭果て獺飽食の魚まくら 神領に仏のおはす木の芽かな 峠にて朝寝夕寝や団子と茶 恋猫や寺の厨に賽の音 虹が立ち易い蕨の緩斜面 春の水蒸発をして美しい *謀(はかりごと)、獺(をそ)