
正面 吉川創揮
冬木の輪郭のありあまる乱立
砂時計冬の日にこの響きかな
落葉掃く時々に蛾の翅や腹
霜夜部屋そのままが液晶にあり
十二月扉の中に鍵の鳴る
空風にひらめく建築の途中
窓拭きのこんなにも冬夕焼かな
雑然と蒲団干されて向かいが家
雪二人うつとり黙りゐたりけり
後ろの正面の前にある枯木

短詩系ブログ

ツイ廢 柳元佑太
午前はや空き腹の感都鳥
天皇もツイ廢もがな憂國忌
天皇やはれちんぽこに塗藥
三島忌やパンツの中へ幾夢精
寒寒と己が首視ゆ靈三島
三島忌の道連童子あはれめや
皇國や木枯勢を休なく
枝を離れ枯葉力學さやうなら
三島忌や日本腑拔けの啜泣
日本に火事また火事やパンケーキ

丈夫 平野皓大
望の夜の枯山水に生あれや
鬼すすき下痢の幻なる流れ
朝露のいつまで丸し雲作り
風の旬ここに風ある大花野
晩秋の住みよき膝を整ふる
四阿のこころ丈夫に月掬ふ
玉子酒神は昆布の遊びなの
十一月閉店が紙いちまいで
地下る寒き姿となりながら
竹馬のうしろ姿を電車から
*地(つち)

ままごと 吉川創揮
白壁を蔦の跡這ふ秋の声
銀の秋舌に飴玉たしかむる
光より小鳥の帰りきて窓辺
行く秋の影いちまいは針仕事
ままごとの家族は落葉暮しかな
落ちてゐる光はねぢや山眠る
山茶花の学校に来るこはい夜
外灯のぼんやり道の鯛焼屋
おやすみは蒲団の中のまつくらに
絵の外は冬晴の陰翳の部屋

寫眞館 柳元佑太
たましひなんて信じないおまへVS魂魄を抜くカメラ・オブスキュラ
おまへは寫眞館のやうだな、あたたかい暗室を持つおのれのうちに
パブロフの犬なる暗がりの吾ら 愛せなくなるまで愛せたら
眼は窓か 光を容れし部屋に唯一人のための植物が咲く
夕暮のわれは犍陀多、起きしなのわが思惟からむ天井の蜘蛛
海底の圖書館は蒐集せよ夜夜の嵐に船沈むたび
ぎんなんの匂ひを厭ひ龍も嘆き合ひしかぺるむ期じゆら期
銀杏樹に火を虛視ればたちまちにSodomの町か火球降り繼ぐ
火に棲む魚の顏かたち言うてみよ、優しいおまへ優しいおまへ
天體の蝕の一ㇳ日も延々と蟲湧き出づる蟲食林檎
*圖書館(ビブリオテカ)、龍(ドラゴン)、虛̪視れば(そらみ-)