庭師禮讚 柳元佑太

 庭師禮讚  柳元佑太

夜明まで詩書く花車なる身體もて八重垣造れその八重垣を

花と樹を從へしかば君の邪氣活潑無比か庭造らむに

丁寧な生活欲す消費者は倣へ毒杯仰ぐぷらとん

天使等の戀わずらひは輕症いから H,He,Li,Be, 氣樂なものさ

天使とて神神の遊擊手なればMerry Christmas! Merry Christmas!

庭師兼天使拂ひを招き入れいたちごつこの永遠愛撫

くれなゐの雌蕊雄蕊も性器なれ中庭に集ひ天使錯亂

呪禁もて天使去らしむ最高の雪降る庭の亂反射光

枝切鋏たはぶれに振る君が統ぶ月の面の海蒸發も

超現實主義者も儚く逝きて草濤に炭化麒麟の燃え殘り立つ

 *中庭(パティオ)

ツイ廢  柳元佑太

 ツイ廢  柳元佑太

午前はや空き腹の感都鳥

天皇もツイ廢もがな憂國忌

天皇やはれちんぽこに塗藥

三島忌やパンツの中へ幾夢精

寒寒と己が首視ゆ靈三島

三島忌の道連童子あはれめや

皇國や木枯勢を休なく

枝を離れ枯葉力學さやうなら

三島忌や日本腑拔けの啜泣

日本に火事また火事やパンケーキ

寫眞館 柳元佑太

 寫眞館  柳元佑太

たましひなんて信じないおまへVS魂魄を抜くカメラ・オブスキュラ

おまへは寫眞館のやうだな、あたたかい暗室を持つおのれのうちに

パブロフの犬なる暗がりの吾ら 愛せなくなるまで愛せたら

眼は窓か 光を容れし部屋に唯一人のための植物が咲く

夕暮のわれは犍陀多、起きしなのわが思惟からむ天井の蜘蛛

海底の圖書館は蒐集せよ夜夜の嵐に船沈むたび

ぎんなんの匂ひを厭ひ龍も嘆き合ひしかぺるむ期じゆら期

銀杏樹に火を虛視ればたちまちにSodomの町か火球降り繼ぐ

火に棲む魚の顏かたち言うてみよ、優しいおまへ優しいおまへ

天體の蝕の一ㇳ日も延々と蟲湧き出づる蟲食林檎

*圖書館(ビブリオテカ)、龍(ドラゴン)、虛̪視れば(そらみ-)

このアパートには住めない 柳元佑太

 このアパートには住めない  柳元佑太

ぼくがまぼろしなのかもなあ 日溜りに睡ると見えて溶けてゆく猫

この町は河川敷から秋になり人々はそれをたまに感じる

テトラポットは波が好きだが仕方なく波を殺める だから墓です

人間が人間に抱きついてゐる、親密な可能性が高い

かなしみが展いた途だつて分かるあめんぼら薄れながら弾ける

ぼくといふ一人の他者の人称は、すべての色で光りかがやく

もしぼくがとても大きな龍だつたら、このアパートには住めないだらう

ママン宛の手紙を抜けだすな文字よ、宙をただよふ、蝶の寄り来る

虹はすべて何処かで蛇が死んだ合図だ、ママン、掃除をしてくれるなよ

合ひ言葉は会ふときに言ふので愛さ、Be Groovy Or B-Movie.

香港・牌 柳元佑太

 香港・牌  柳元佑太

掌に塔立ち上がる炎暑かな

金魚とは冷たき火なり香港死す

秋はるか来し旅人に紅生姜

蝋燭の火の湧き出づる水見舞

天体の惰性の線に二たつ柿

星の夜の確率に牌起し伏す

脱法の麻雀の柿動きけり

惣老師より一筆と祭寄付

持ち山は松茸山ぞ惣老師

秋草の未来の彼は潑剌たり

Let me take you down, ‘cause I’m going to Violet Fields. 柳元佑太

Let me take you down, ‘cause I’m going to Violet Fields.  柳元佑太

言語野にすみれの咲ける季とわかる こゑがすみれの色になるから

あなたのこゑはぼくのこゑよりもおそい、それをうらやましいと思へり

孤児院に孤児がひとりもゐなくなり、まつ白い箱だけがのこれる

いつぽんのすみれの花のうつくしさに、こゑが追ひつくまで待てばいい

雨がふるまへの匂ひで、すぐ帰る決意のできる友だちであれ

雨のふるあひだでもつとも音がせり 雨があがつてゆける瞬間

ほんたうのこゑを包んでゐるこゑが剥がれてきても冷たくはない

すみれ野は午のあかるさ すぐそこに夏のあらしがやつてきてゐる

もうぼくは優しさを休ませてをり すみれ野のふるすみれの雨に

原つぱのすみれの花をつむための、想像の友だちを忘れない

海 柳元佑太

 海  柳元佑太

雨乞を総出でしたり西瓜村

喩の魚の水得て炎天に浮くか

雨乞の雨が誤配や山向う

夏のゆめ海は何気に茨城に

夢くはせ獏可愛がる昼寝かな

うつつ食ふ獏は殺めて西瓜糖

幻か真夏真水に彳むは

見えねども虹ある日々は手漕舟

西瓜童子寝坊を軽く詫びにけり

夏雨滂沱茶漬は何の出汁なりや

似非 柳元佑太

 似非  柳元佑太

楠へ鳥突つ込むを更衣

筍を提げ人様の夢に出ん

赤鱏や海にもありて飄

一族の〆鯖好きも柿の花

雷や何はともあれ穴子寿司

夏風邪の鼻垂れて秘儀猫だまし

大學で似非學問や稲の花

カンフーは気の変幻や龍の玉

秋風や波乗り替へてあめんぼう

本積んで懈怠の民か秋昼寝

 *飄(つむじかぜ)

団子と茶 柳元佑太

 団子と茶  柳元佑太

妹ゆ捨仔猫飼ふ謀

紅梅や男は尿を見つつ出す

積もらない雪が降りをり桜鯛

啓蟄や火星にも地震あんなりと

祭果て獺飽食の魚まくら

神領に仏のおはす木の芽かな

峠にて朝寝夕寝や団子と茶

恋猫や寺の厨に賽の音

虹が立ち易い蕨の緩斜面

春の水蒸発をして美しい

 *謀(はかりごと)、獺(をそ)

火の丈 柳元佑太

火の丈  柳元佑太

春は名のみの墨滴に溺れし蚊

竹の秋僧多くして寺静か

火の丈を吹いて育てし蕨かな

花冷や鴎飛び交ふ山ふもと

花夕の流れげむりも雨意のさま

として受け取る春星の遅延光

木の眩暈朝日が夜を阻却せり

春雷や飯少量を茶漬とし

ありふれて雨降る日々や蕗薹

その記憶皐月岬のものならん