Rumble 丸田洋渡

 Rumble   丸田洋渡

かたつむり真っ逆さまのシャンデリア

これもまた宇宙のオルゴールに当たる

蛸が蛸で線路が線路でよかったよかった

まるで疾風透けていて子どもたちって

毒の小瓶 光の小瓶 そのスケッチ

蛾のせいで踏んだり蹴ったり蛾のきもち

空もまた拷問される側 晩夏

棋士黄昏馬はいつかの葉桜の下

夜とはいえ 氷山を考えぬいた

闇で合う星の帳尻こんぺいとう

樹になる  丸田洋渡

 樹になる  丸田洋渡

あちこちに林間学校の名残

変声の植物のような段階

りりかるに林立と落葉を聴く

古い風に惚れ惚れの蜘蛛が揺られる

円了忌空間で人擦れちがう

となれば誤記 夢中夢を増殖する鏡

まぼろしの空の鳩尾ながびく雨

樹の裡に在るああ空鳴りの反射炉

うつらうつら樹になるバグの五月を迎え

倚りかかるいま夏を夢みている樹に

*鳩尾(みぞおち)、裡(うち)、倚りかかる(よ-りかかる)

錆  丸田洋渡

 錆  丸田洋渡

ゆきやなぎすべての車引き返す

木には木の病空には空の餐

紙匂う椿めくれる大きな手

行きとどく花のからだに鳥の恋

そこにゆれる知子どもたちは雪を催す

凍滝と同じやり方で 話す

ヒヤシンス声錆びてきて夜な夜な研ぐ

天にある楽器・楽器屋・御茶ノ水

この世この夜サイダーを花茎で飲む

空間大切ぴったりと蝶いることで

Ghost in the Flower  丸田洋渡

 Ghost in the Flower  丸田洋渡

熱さめて雪に英文法を見る

風ぐるま友だちの訃を聞きながら

花にかげ彼に彼らが憑いている

春嵐そして花と霊のいきさつ

花に霊重る十年前のラジオ

花ふる曲わたくしたちは傘の指揮者

怪談がいよいよトンネルに入る

机にはすみれ文字化けの液晶

考えは風につつぬけ金鳳花

引越しの花から花へ花畑

 ※重(だぶ)る

めまい  丸田洋渡

 めまい  丸田洋渡

ふしぎな舌もちあげ春の水琴窟

足は汀に飛行機のおもてうら

子どもにも大人のめまい蝶撃つ水

片栗の花サーカスのはなれわざ

とつぜんに雪の術中小さな町

岬の密室どこまでが蜂の領域

輪のような推理きんいろ函の中

騙りぐせある蜂に花史聞くまでは

水景に祠のきもち誰かの忌

桜ばな樹の怪ものの怪ゆめみるとき

Aphantasia 丸田洋渡

 Aphantasia  丸田洋渡

四季周回 心的レコードの蒐集

蝶が溶ける世界の溶け方を見ている

誤作動が紡いできたし継ぐつもり

水の多寡みている鴨と白鳥と

夢のなか雪のように来た郵便物

氷橋いつかの天国のあらまし

一対の鷺の想像力に賭ける

鶴もつづいて球体に そしてそして

見えにくい梯子の見えにくさについて

知的なふるまい詩的なうるおい貂を連れ立つ

 *蒐集(しゅうしゅう)、鷺(さぎ)、貂(てん)

Overlap 丸田洋渡

 Overlap  丸田洋渡

秋も冷えて針を正確に思う

嘘ですが水族館がありました。

鮫のことなら雰囲気として判るよ

霜夜はるか流線形の流行ったころ

舌禍と句 話すの上手いね昔のこと

柚子湯夕ぐれ失踪も死あつかい

牡蠣鍋や転生を確かめあった

夢という大きな疲れ得て狼

雪の日の気分は火 死なないでいたい ね

鳰ふたつの椅子のように凛

 *鳰(かいつぶり)

儀後 丸田洋渡

 儀後   丸田洋渡

儀のなかの奇術しかるべきときに鷲

十六夜の身の欠損に新たな身

半癒半壊人と鹿入り交じり

角見せて錯覚の木の裏を鹿

罰すこし快ひとりでに洩れだす葡萄

枝豆に眼一回転する思い

水と子と水の子のくるおしい舞踊

光には光語があり長い吐瀉

虚実ある雪の虚に腕朽ちてゆく

伝承を激しく理解した 雪月花

everlasting 丸田洋渡

 everlasting  丸田洋渡

胡桃ホテル戦争を話しますかね

威銃あたまのなかの樽のなかまで

感性の空とぶ魚群ぷちぷち死ぬ

鹿振りむく風がたしなめる空位

霜降や空もひとりの悲しい子

艦おちてくる雪のはじめてのように

​ああ空の産卵期ひとつずつ磨く

季として死あるのかも空色の空

これからは海の海たる不安のなかで

終わってもつづく映像/映像美

天使感 丸田洋渡

天使感  丸田洋渡

天使感ある一瞬のわたしたち

心臓=檸檬 生まれすぎた子ども

からくりを新涼の地/月球儀

月ぐうぜん卵のかたち袋角

引用者 子どものなかの誰かの血

子どもが月を 直視している

こころ昂る窃盗は夜のうちに

この網に月かかるのは時間の問題

世界は蚊のように震えていました。

天使感ある熱演のわたしたち