妖/宴  丸田洋渡

 妖/宴  丸田洋渡

聖と俗 瓦斯灯に朦朧の川
灰神楽長い廊下は家を離れ
宴にはあやかし甘やかし寄鍋
酒と鶴 い 胃の中で渦になって
戸惑いながら牛鬼を食い終わる
がしゃどくろ眼になりそうな月は空に
時の砂へ時の光が葛の葉裏
一瞬の鵺の感電死と蘇生
電球の巧みに点いて懐手
すこしずつ氷雨が天むすの天に

燭光をかなしみの目目連に
人間が障子の向こう側に居る
占いは全て的中瓶の雲丹
人よりも言葉進んで天狗に風
ポインセチア奇岩ならべて岸に波
そよ風に遺跡を透視する
流星群草の夜には竪琴を
惑星に鷺と排水溝あれぱ
落日の烏は暗号のように
宴・蜜月・夢みるほどに強い酒
耳朶に鉄の冷たさ塔跡地

唐傘に一本脚その下駄の雪
打鐘・暖簾に・腕押し・腕押し・夜の鼬
うどん〈冷〉そば〈温〉あと少しの揚げ物。
効くまえに毒の宴の皿いくつも
顔のない風が竜巻まで太る
薔薇を巡る戦争をしてみたかった
まぼろしの凍るヘリコプターの羽根
色んな丘へ色んな傘を置いてきた
羚羊は石碑で苔の詩が読める
くるみの木差し障りない話して
呪いとは口偏ブロッコリーの花

妖精に骨いくつある雪時雨
衣擦れの音が増えスノードロップ
孔雀にも湾のよろこび眠りの雪
雪煙こんな壺にも発情期
火のなかに腕ひとつずつポーチュラカ
つらら生る幽と妖とを併せもち
水面に二輪馬車ある天井画
雨に酔う爽の公園竜舌蘭
鬼と篝火なつかしい宿を囲んで
水瓶の零れをめぐり甲と乙
剣/骨牌/スローモーション/骨牌/剣

亞 月の洞に二匹は弓なりに
妖と艶やがて一つになる踊
蝸牛から扁桃体へのお手紙。
光度輝度あらゆる文字が目に入る
光あつめて硝子の花緒硝子の中
つぎつぎに月迫り上がり宴の旬
見たことのない螺子締めて百年後

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