狐花 平野皓大

狐花  平野皓大

鉄に木に屑を出すなり暮の秋

種固し桃の甘みをまとふゆゑ

白菊や帯のふかくを怯ゆる刃

変装の暗がりにあり狐花

ほつれ糸引きゆがむ唇鳥渡る

満山に吾ののさばる濃霧かな

霧の夜のどの箴言も通じあふ

秋の眼や蕉翁幻視することも

なきものの匂ひが口へ秋深し

遠ざかる網を見てゐる鰯かな

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