馬肥えぬ叩きめぐりて二三人 橋本鶏二

所収:『ホトトギス雑詠選集 秋』(朝日新聞社 1987)

大木を叩くように打ちつけた手のひらをはねっ返すその胴体はよく肥え引き締まり、外見からして力が漲っているのが分かる。今日、11月1日、アーモンドアイが芝のGⅠレース最多となる八勝目をあげ、過去の名馬たちの記録を乗り越えた。といっても競馬は血のスポーツであり、過去の名馬の血は脈々とアーモンドアイにも流れこんでいる。ポッと出の天才が地図を大きく塗り替えたというより、血の改良によって、なるべくして記録は塗り替えられたと言えるだろう。今年の競馬界いえば、牝馬三冠と牡馬三冠がはじめて同年度に達せられ、いずれも無敗という運・実力の強さ。ゴール板を一番に駆け抜けて、騎手は馬の首を二度、三度と叩く。ウイナーズサークルでは馬主や調教師も思い思いに、背や尻をなでる、叩く、触れる。それは労うようであり称えるようであり喜びを伝え分かち合うようであり、馬と人の交流は今も昔も変わらず肌と肌によってなされる。

記 平野

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