揚花火明日に明日ある如く 阪西敦子

所収:『天の川銀河発電所』左右社 2017

花火大会だろう。消えては揚げられ、消えては揚げられを繰り返す花火にとめどなく続く毎日を重ねているのだ。

花火は一瞬で消えてしまう儚さに注目されがちだが、この句の視点はそれとは異なる。
どこまでも続くかのように思われる明日の連続、それは人間1人1人の身には余る大きなもので、捉えきることはできないし、むしろ圧倒されてしまう。
それは花火も同じだろう。打ち上げられた時の大きな音に、夜空いっぱいに開く光に、その鮮やかな色彩に、私達は圧倒されてしまう。
この句から立ち上がる花火は、儚さではなく迫力を持っている。

「明日に明日ある如く」というフレーズは抽象的だけれど、何故か花火の様子がはっきりと浮かぶ比喩だ。先日、散歩している最中に花火を見たけれど、間髪なく花火が揚がり続けるフィナーレはまさにこの表現がピッタリだった。

ここまでいろいろと書いたけれど、結局のところ花火が終わってしまうことを私達は知っている。そのことがこの句の味わいをより深くしている。

記:吉川

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