バスが来るまでのぼんやりした殺意 石部明

所収︰『現代川柳の精鋭たち』(北宋社 2000)

 バスが来るまでぼんやりとした殺意を抱く。抱く、というほどでもないかもしれない。ぼんやりと頭のなかが、体が、殺意でいっぱいになっている。バスが来たあと、この殺意はどうなったのだろう。消えたのか、忘れたのか、違う気持ちに変化したのか。その殺意は「ぼんやり」と言いながら、たしかに「バスが来るまで」はあったという事実に、ひやりとするものがある。バスがもし永遠に来なかったらと思うと、更に……。

記︰丸田

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