所収:『たんぽるぽる』かばんBOOKS 2011
雨の日がくるとふと思い出す一首。
雪舟えまの歌の多くに他者への肯定の念が含まれていることはよく言われることだろう。この歌も例に漏れず、「人類」を「似合っているわ」と肯定してくれている。そんなあまりにも大きな愛とでも呼ぶべき感情はこの歌の大きな魅力だけれど、他の点にも注目したい。
まず降ってくるのが「雨」ではなく「傘」なのは巧みなずらし方だ。そしてこのずらしが違和感を生む。それぞれが差す傘は自身で選び、必然的にそれぞれが持っている傘のはずなのに、偶然降ってきた傘を差しているような気がしてくる。この歌の主体が言っていることは「人類それぞれ自身で選んだ傘が似合っていること」から、「人類それぞれに偶然降ってきたはずの傘がそれぞれに似合っていること」に変化する。
作品を鑑賞する際に軽率に他の作品を引き合いにだして、似ていると評するのは自分としては好きではないのだけれど、ここまで書いて。YUKIの『JOY』の『運命は必然という偶然で出来てる』というフレーズを思いだす。この雪舟えまの歌にあるのは、偶然が必然として現れる瞬間なのかもしれない。
記:吉川
たしかにJOYっぽい!
返信が遅くなってすみません。鑑賞として自信がないままに書いたことだったので共感いただけて嬉しいです。今後も時々読んでいただけると幸いです。 記:吉川