朝顔や政治のことはわからざる 高濱虚子

所収:『六百五十句』

もうすぐ都知事選挙ということで、この句。昭和25年の作である。岸本尚毅の『高濱虚子の百句』でも取り上げられているが、如何にも虚子というふてぶてしい句。同著によると政治家になる気はなかったか」と問われた虚子は「政治家になる気はなかったが政治に興味は持っていた」と答えたらしい。ありそうな話である。それでもいちおうポーズとしては、政治なぞ分かりませぬ、である。

ラディカル虚子研究家岸本尚毅が季語の斡旋を褒めているだけあって、たしかにこれは朝顔が動かない。飾らない市井の花であり、いかにも民衆的でなぜかどこか貧相な感じもする花である。庶民で学のないわたくしなぞには政治のことは分かりませぬ、というポーズにはぴったりの、すこし間の抜けた感じの取り合わせに思える。

しかし本当に政治が分からない人はここに朝顔をつけないはずで、そういうところも含めて如何にも虚子だなぁという物言いになるわけである。〈時ものを解決するや春を待つ〉というような態度といい、虚子は民主主義にあまり適性がなさそうに思える。ものすごくナンセンスなまとめだが、今日はこのへんで。

記:柳元

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