
空と鍵束 丸田洋渡
墜ちながら声がきこえる昼寝覚
鍵として舌つかうとき向こうも鍵
わたしにもわたしが欲しい韮の花
淵も咲くほどの月光ふたりの脚
宇宙ごと錆びてしまえたらなとおもう
かなしみや岐路から岐路へ鳳蝶
夜も朝も祈念のように白飛白
宝石のあかるさにまで火葬式
夢として鍵に扉が過剰であった。
鍵束 空をひらいてまたとじて
※韮(にら)、鳳蝶(あげはちょう)、白飛白(しろがすり)
短詩系ブログ
Let me take you down, ‘cause I’m going to Violet Fields. 柳元佑太
言語野にすみれの咲ける季とわかる こゑがすみれの色になるから
あなたのこゑはぼくのこゑよりもおそい、それをうらやましいと思へり
孤児院に孤児がひとりもゐなくなり、まつ白い箱だけがのこれる
いつぽんのすみれの花のうつくしさに、こゑが追ひつくまで待てばいい
雨がふるまへの匂ひで、すぐ帰る決意のできる友だちであれ
雨のふるあひだでもつとも音がせり 雨があがつてゆける瞬間
ほんたうのこゑを包んでゐるこゑが剥がれてきても冷たくはない
すみれ野は午のあかるさ すぐそこに夏のあらしがやつてきてゐる
もうぼくは優しさを休ませてをり すみれ野のふるすみれの雨に
原つぱのすみれの花をつむための、想像の友だちを忘れない