遠く見る 吉川創揮

 遠く見る   吉川創揮

云ふ間にも夕立の粒見えてきし

十薬は遠のくやうな明け方に

押入の二階に兄や梅雨に入る

更衣マンション群といふ反射

アイスコーヒー氷を離れてゆく水

手の中に消えゆく氷のざらつき

向日葵や手すりに顎をのせてゐる

よこながに夏晴れてゐる鉄路かな

目を瞑るこはさを泳ぎ続きけり

蛾の軌跡縺れながらにうすあかり

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