ぼけた  吉川創揮

 ぼけた  吉川創揮

パン用のオリーブオイル黄水仙

鴨達を追わずに鴨のありにけり

海へ行く春おしゃべりな運転手

金ヘルメットみるみる遠く春の海

人に影ふたつ発電所に桜

顔中に春一番の分厚さよ

ネーブルや階段を吹き抜ける声

先生の話の調子シクラメン

石裏のぬくきを掌に移す

珈琲や白波の散るぼけた景

紋黄蝶砂に光の紛れある

鰻屋の春の闇てふ湖のうえ

桜鯛タイムマシンはこないので

囀やじようろを吊るす銀金具

遠ざかるもの眩しくて春の旅

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