此処あったかいよとコンビニエンスストアの灯 池田澄子

所収:『思ってます』ふらんす堂 2016

現代日本社会の象徴の1つとしてコンビニエンスストアは挙げられるのではないだろうか。掲句が収録された句集が刊行された2016年には、村田沙耶香の『コンビニ人間』(文藝春秋)も刊行されており、文学においてコンビニが現代日本社会の主要なモチーフとなっていることがなんとなく感じられる。

コンビニはその名の通り、コンビニエンス=便利なのだがコンビニの独自性はそれではなく、どこにでもあるし、いつでも営業していることにあるように思う。
旅先で気軽に入れそうなお店が見つからない時、深夜眠れなくてお腹が空いてどうしようもない時、そういう些細な心の靄をコンビニの存在が解消してくれる。コンビニはなくても生活はできるが、コンビニがあることで無理に踏ん張る必要がなくなる時が生活には多々あると1人暮しをはじめてから感じている。(コンビニは深夜営業やフランチャイズ経営に由来する様々な問題を抱えており、それらを含めて簡単に肯定はできないが)

「あったかいよ」という口語による表現には、温度の問題だけでなく、上記で述べたように私が感じている温かさも含まれているだろう。「灯」のイメージもまたそれを補強する。

コンビニの灯がこちらに「あったかいよ」と呼び掛けているように感じるような夜は、やたらと明るい無機質なあの照明も違って見えるだろう。

記:吉川


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