虹を懸け時が到ればまた外す 山口誓子

所収:『和服』1955 角川書店

地球という星があり続けるに当たって不必要としか思えない現象が幾つかあって、虹という現象もその一つだと思う。

虹は、どことなく他の自然現象とは異質で、特別な感じがする。単純にその色遣いの豊富さであるとか、天に架かるはるけさに心打たれるのかもしれない。時たま現れる神秘性もまたその感覚を強めるのだろう。

世界各国、様々な民族が虹に対する神話なり俗説を持っていると思われ、虹の根元には財宝が埋まっているという言説しかり、虹を蛇とみなす神話類型しかり、文化人類学的にも非常に考察のしがいのある代物となっている。

さて、山口誓子の句においては、神とでも言うしかないものが虹を懸け、そして暫くすればまた外すのだ、という。機知を感じさせる把握で鼻につかないわけではないけれども、もし神がそういった気まぐれで虹の架け外しを行っていると考えれば何処となく可笑しい。もう少し他にやることがあるのではないか。

記:柳元

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