岩魚飼ふ大雪山の雪解水 長谷川櫂

所収:『蓬莱』 2000 花神社 

長谷川櫂も前書で述べているように、大雪山にすみなす岩魚すなわちオショロコマは、太古の昔に湖が陸に封じ込められてから独自の進化をとげた岩魚と言われている。が実際のところは陸封型だけでなく降海型もいるようである。しかしながらオショロコマの個体数は減少の一途を辿っており、現在は殆どが陸封型とも言われているから長谷川が前書で書いているところも間違っているわけではないのだろう。

大雪山というのはタイセツザン、と呼ぶ。北海道の中心部を貫く峰々(北海道最高峰の旭岳、活火山の十勝岳などなど)をまとめてそう呼びならわし、大雪山という山が存在するわけではない。大雪山は7月ごろまで雪渓が残り、蒼く澄みきった山容はいかにも北海道の山と言った感じがする。

さて、その雪解水で、大雪山は岩魚を飼っているのだと長谷川櫂は述べる。ここには多少の擬人化がある。けれど思えばアイヌの人たちも、山々を男女の神々に見立て、様々な神話を作ったことを思えば、この擬人化は心地よく受け入れられよう。たしかに鈍く照り輝く岩魚のうす翠いろの肌は、神の恩寵に思える。

記:柳元

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