しみじみと沁々と冬の日を愛しけり 赤尾兜子

所収:『䬃』渦俳句会 1983

1983年と言えば兜子の死去後すぐであるが、この句は晩年に書かれた句ではなくて、青年期に書かれたもの。若きころの兜子の未発表句稿を『䬃』として発表したらしい。和田悟朗はこの頃の兜子作風を戦中のミリタリズムへの反省と前衛的作風の萌芽が見られると評している。

レトリック的にはなんてことの無い句だけれど、兜子の持つシリアスさが直截的に表れている。シリアスさというのは兜子の大きな魅力であるように思うし、平成の俳句が平明さ・完成度と引き換えに失ったものがシリアスさであるとするなら、いまひとたびシリアスさを引き受けることは意味があることなのかもしれない。少なくとも藤田哲史『楡の茂るころとその前後』左右社 2020 などには同様のシリアスさを感じる。

記:柳元

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