
Aphantasia 丸田洋渡
四季周回 心的レコードの蒐集
蝶が溶ける世界の溶け方を見ている
誤作動が紡いできたし継ぐつもり
水の多寡みている鴨と白鳥と
夢のなか雪のように来た郵便物
氷橋いつかの天国のあらまし
一対の鷺の想像力に賭ける
鶴もつづいて球体に そしてそして
見えにくい梯子の見えにくさについて
知的なふるまい詩的なうるおい貂を連れ立つ
*蒐集(しゅうしゅう)、鷺(さぎ)、貂(てん)
短詩系ブログ
ツイ廢 柳元佑太
午前はや空き腹の感都鳥
天皇もツイ廢もがな憂國忌
天皇やはれちんぽこに塗藥
三島忌やパンツの中へ幾夢精
寒寒と己が首視ゆ靈三島
三島忌の道連童子あはれめや
皇國や木枯勢を休なく
枝を離れ枯葉力學さやうなら
三島忌や日本腑拔けの啜泣
日本に火事また火事やパンケーキ
丈夫 平野皓大
望の夜の枯山水に生あれや
鬼すすき下痢の幻なる流れ
朝露のいつまで丸し雲作り
風の旬ここに風ある大花野
晩秋の住みよき膝を整ふる
四阿のこころ丈夫に月掬ふ
玉子酒神は昆布の遊びなの
十一月閉店が紙いちまいで
地下る寒き姿となりながら
竹馬のうしろ姿を電車から
*地(つち)
ままごと 吉川創揮
白壁を蔦の跡這ふ秋の声
銀の秋舌に飴玉たしかむる
光より小鳥の帰りきて窓辺
行く秋の影いちまいは針仕事
ままごとの家族は落葉暮しかな
落ちてゐる光はねぢや山眠る
山茶花の学校に来るこはい夜
外灯のぼんやり道の鯛焼屋
おやすみは蒲団の中のまつくらに
絵の外は冬晴の陰翳の部屋
寫眞館 柳元佑太
たましひなんて信じないおまへVS魂魄を抜くカメラ・オブスキュラ
おまへは寫眞館のやうだな、あたたかい暗室を持つおのれのうちに
パブロフの犬なる暗がりの吾ら 愛せなくなるまで愛せたら
眼は窓か 光を容れし部屋に唯一人のための植物が咲く
夕暮のわれは犍陀多、起きしなのわが思惟からむ天井の蜘蛛
海底の圖書館は蒐集せよ夜夜の嵐に船沈むたび
ぎんなんの匂ひを厭ひ龍も嘆き合ひしかぺるむ期じゆら期
銀杏樹に火を虛視ればたちまちにSodomの町か火球降り繼ぐ
火に棲む魚の顏かたち言うてみよ、優しいおまへ優しいおまへ
天體の蝕の一ㇳ日も延々と蟲湧き出づる蟲食林檎
*圖書館(ビブリオテカ)、龍(ドラゴン)、虛̪視れば(そらみ-)