カラマーゾフ的 吉川創揮
兄弟の会食霙から雪へ
ペーチカや夢に蒸し返される罪
北塞ぐ故郷は墓を残すのみ
密室を開く証言毛糸編む
冬薔薇愛は跪かせる凡て
接吻に触れる鼻息・鼻・雪
雪に日の燦を私にあなたを
冬帽を胸に伏せ立つ色欲も
いろいろに紙幣美し破り捨てむ
なんらかの塔欲しき水涸れの景
人助けの気分は吹雪く只中に
差し出せば大きく頼りなき葱よ
着ぶくれの天使飛び降りの現場に
罰の皮膚感覚たしかな冬の水
枯園やかしこき人と話少し
曇り日の川の表面山眠る
十二月葬式で友だちになる
枯蟷螂一神教の言う「あなた」
思い出のために見てゐる冷えた窓
夢は片割れ氷溶けはじめる頃の