所収:『俳コレ』 邑書林 2011
「ティー」「向う」の長音(という表現で合っているだろうか)の連なりが、伸びやかな印象を与える1句。
この句に書かれている行為は何気ないものだけれど、レモンティーを淹れる時間と雨が降り続く時間、そして雨で白く靄がかかる景色とその向こうに広がる海と、読み解いていくと時間と空間が静かに広がっていく。
見えない物に思いを馳せると言う行為は非常にロマンティックな匂いがするものだが、取り合わされたレモンティーが、そのロマンティックさを保ちながらも日常の何気ない風景に地に足をつけるように働いているのが非常にうまい。
文体も内容も秋のゆったりとした空気を感じさせてくれる1句だ。
記:吉川