日月潭  柳元佑太

 日月潭  柳元佑太

松島や春は名のみの千々の濤

 (前書)平野皓大、遲刻癖あり

朋友(ともがら)を長待つしまや春の海

旅に讀む本薄(いささ)かや濤も春

朋友(ともがら)來春外套を脫ぎながら

春の旅ごゝろよ着けば卽汲まん

晝酒に晝酒かさぬ榮螺をあて

火に榮螺噴くや榮螺の身かゞやき

蒲鉾の微發光せよ春の晝

 (前書)吉川創揮、事情通なれば

韓國(からくに)のidolばなし百千鳥

糟丘(さうきう)に坐し春の海眺めんか

幻視(そらみ)よや春を翁が浮步(うけあゆ)み

橋かけて渡らんとしき椿島

 (前書)丸田洋渡、園丁なれば

春や汝もはや植物學者哉

これよりは牡蠣殼島と申すべき

島々を花粉經廻りゐたる哉

さう思ふべしや花粉も過客なりと

霞なる舟霞なる島嶼(しまこじま)

灣のもの皆霞むなり吾も又た

甲板に出て春風を縱(ほしいまま)

それも又た一興春の氣球詐欺

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