脚注樹林   柳元佑太

脚注樹林   柳元佑太

萬物(もの)淡き夢の都市とや鶴飛べる

遠つ方より萬象の冷えはじむ

霜柱の上に高原(たかはら)ありて寂漠(さび)し

萬物(もの)總(なべ)て時閒(とき)に野晒し冬蒼太虛(ふゆあをぞら)

鳰創造(つく)り浮べ懷(こころ)の水邊(みづほとり)

枯葦や睡り傳はる水禽(とり)どうし

川ほとり逍遙(ある)かば冷えめ吾が靈魂(ぷしゆけ)

眞冬より寒き初冬や論文書く

脚注にももんが棲めり針葉樹

夢を旅(ゆ)く兎の群に追つて沙汰

天使學   柳元佑太

天使學   柳元佑太

天使學水澄む頃に修められ 

秋茄子に呆れてトマス・アクィナス

矢が下手な天使がよろし山の秋

柿熟す戀は天使の暇つぶし

光線(ひ)と共に天使の天降(あも)る苅田かな

閒違へて天使天降(あも)れる紅葉寺

佛さま天使を放逐(やら)ふ紅葉かな

天使たち草相撲みて歸還(かへ)らむか

掛稻や映畫の愛の平凡(ありきた)り

稻掛けて天使同士は戀をせず