磨かれた消火器の赤明日また会う 鈴木六林男

所収:『櫻島』 アド・ライフ社 1957

無季の1句。
この句が詠まれた当時のことは分からないが、現代において消火器は学校や職場など様々な場所で毎日のように目にするだろう。だからこその「また会う」というフレーズ。
磨かれた消火器の色は、発色がよく、光もよく反射するのでどことなく安っぽく軽薄な印象を与える。消火器が連想させる火事という恐ろしい現象も切迫感をもって立ち現れることはない。
消火器の赤にぼんやりとした不穏さを感じながらも、「明日また会う」とこの不穏さが日々続くと考えるこの句の主体は、どことなく現実に対して冷めているような人物として立ち上がる。
577の形をとる句は、句末が伸びているために間延びした印象を与えがちであるが、「明日また会う」は、a・si・ta・ma・ta・a・uと、a音を多く含むからかリズミカルにも感じられる。

記:吉川

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