めまい  丸田洋渡

 めまい  丸田洋渡

ふしぎな舌もちあげ春の水琴窟

足は汀に飛行機のおもてうら

子どもにも大人のめまい蝶撃つ水

片栗の花サーカスのはなれわざ

とつぜんに雪の術中小さな町

岬の密室どこまでが蜂の領域

輪のような推理きんいろ函の中

騙りぐせある蜂に花史聞くまでは

水景に祠のきもち誰かの忌

桜ばな樹の怪ものの怪ゆめみるとき

Aphantasia 丸田洋渡

 Aphantasia  丸田洋渡

四季周回 心的レコードの蒐集

蝶が溶ける世界の溶け方を見ている

誤作動が紡いできたし継ぐつもり

水の多寡みている鴨と白鳥と

夢のなか雪のように来た郵便物

氷橋いつかの天国のあらまし

一対の鷺の想像力に賭ける

鶴もつづいて球体に そしてそして

見えにくい梯子の見えにくさについて

知的なふるまい詩的なうるおい貂を連れ立つ

 *蒐集(しゅうしゅう)、鷺(さぎ)、貂(てん)

Overlap 丸田洋渡

 Overlap  丸田洋渡

秋も冷えて針を正確に思う

嘘ですが水族館がありました。

鮫のことなら雰囲気として判るよ

霜夜はるか流線形の流行ったころ

舌禍と句 話すの上手いね昔のこと

柚子湯夕ぐれ失踪も死あつかい

牡蠣鍋や転生を確かめあった

夢という大きな疲れ得て狼

雪の日の気分は火 死なないでいたい ね

鳰ふたつの椅子のように凛

 *鳰(かいつぶり)

儀後 丸田洋渡

 儀後   丸田洋渡

儀のなかの奇術しかるべきときに鷲

十六夜の身の欠損に新たな身

半癒半壊人と鹿入り交じり

角見せて錯覚の木の裏を鹿

罰すこし快ひとりでに洩れだす葡萄

枝豆に眼一回転する思い

水と子と水の子のくるおしい舞踊

光には光語があり長い吐瀉

虚実ある雪の虚に腕朽ちてゆく

伝承を激しく理解した 雪月花

everlasting 丸田洋渡

 everlasting  丸田洋渡

胡桃ホテル戦争を話しますかね

威銃あたまのなかの樽のなかまで

感性の空とぶ魚群ぷちぷち死ぬ

鹿振りむく風がたしなめる空位

霜降や空もひとりの悲しい子

艦おちてくる雪のはじめてのように

​ああ空の産卵期ひとつずつ磨く

季として死あるのかも空色の空

これからは海の海たる不安のなかで

終わってもつづく映像/映像美

天使感 丸田洋渡

天使感  丸田洋渡

天使感ある一瞬のわたしたち

心臓=檸檬 生まれすぎた子ども

からくりを新涼の地/月球儀

月ぐうぜん卵のかたち袋角

引用者 子どものなかの誰かの血

子どもが月を 直視している

こころ昂る窃盗は夜のうちに

この網に月かかるのは時間の問題

世界は蚊のように震えていました。

天使感ある熱演のわたしたち

空と鍵束 丸田洋渡

 空と鍵束  丸田洋渡 

墜ちながら声がきこえる昼寝覚

鍵として舌つかうとき向こうも鍵

わたしにもわたしが欲しい韮の花

淵も咲くほどの月光ふたりの脚

宇宙ごと錆びてしまえたらなとおもう

かなしみや岐路から岐路へ鳳蝶

夜も朝も祈念のように白飛白

宝石のあかるさにまで火葬式

夢として鍵に扉が過剰であった。

鍵束 空をひらいてまたとじて

 ※韮(にら)、鳳蝶(あげはちょう)、白飛白(しろがすり)

the fifth season’s texture 丸田洋渡

 the fifth season’s texture  丸田洋渡

律の移動わたしと接している闇

雨のなか花のきもちで石のきもちで

雨のあとの三角形が分からなかった

川に海に婚姻ふるびている日照

季 いくら剥がしてもまだある布の

空の書法織って織られて水に似て

心臓に魚のこころ見えている

死は一生分の閃きとともに

雲として現れたいよ格子窓

レモネード空はいつでも回転式

亜麻色の燦 丸田洋渡

 亜麻色の燦  丸田洋渡

空に棹さして四千の演奏

うっとりと虹の骨子を呑みこむとき

萍をすべらせ川の正しい地図

流しそうめん場の小さな滝と洞窟

しずかな日のしずかな殺人水芭蕉

雨、雨、縫合の亜麻色のさなかに

羽のあるゆたかな舞踏草いちご

花潜ひかりの網にかかりつつ

浮上 いちめんにすずしくて合図は

繭こわれ渦のかたちにやまない燦

 *萍(うきくさ)、燦(さん)

再演 丸田洋渡

 再演  丸田洋渡

葉書くる花過ぎとこしえのダンス

芍薬とその周辺が思いだされる

むかしほど細かく見えて作り雨

白玉や空を初めて見たときのこと

そのころの草矢眩しく電気を感じる

くらやみにおける白蛾に似て脳は

わたしより前の記憶の水中花

鷺になり光を追う点滅のさなかに

羽と天秤くらがりを鮎なめらかに

ただ一人祭のなかで思いだした