所収:『八頭』永田書房 1985
画数の多くずっしりとした印象を与える2字熟語が3つ連なることで、重たい印象を受ける1句。その印象は「鬱」をテーマとしたこの句の内容とも通じている。
「鬱」というのは心の状態を表す言葉であるが(うつ病ならば単に心の問題ではない)、「鬱頭」という熟語になると、頭という身体が見えてくる。だからこそ、この句における「金蠅」と「銀蠅」は「鬱」のメタファーとして機能しているだけでなく、本当に生身の蠅が生身の頭にやって来るような、そんなグロテスクさを醸している。
一方で、金と銀の並列によって、そこに美が生まれることもまた事実であり、鬱という現象の様々な面を捉える1句であると言えるだろう。
記:吉川